冬に咲く花
作・中野浩作
作品紹介
1月9日。仕事を終えて帰宅した男は、いつものように同居する恋人の帰りを待っていた。
翌朝、彼女の姿はなく、部屋から私物もすべて消えていた。残されていたのは、見覚えのない一鉢の植物だけだった。
男はその植物を前に、二つに分かれていく。鉢植えを捨て、彼女を忘れようとする男。鉢植えを育て、そこに彼女の姿を重ねていく男。
育てられた植物は冬の中で青い花を咲かせ、やがて人間の指や手を生やし始める。一方、植物を捨てた男の身体にも、もう一方の世界で起きている出来事が傷や指輪となって現れていく。
忘れることと、手放さないこと。愛することと、自分の望む姿に相手を閉じ込めること。
別れた恋人をめぐる二つの時間が重なりながら、一人の男が失ったものと向き合っていく一人芝居台本。

