ジェンガ
作・中野浩作
作品紹介
名前も、自分がどこから来たのかも忘れてしまった青年は、大勢の人々とともに、巨大な塔へ続く階段を上り続けている。手元に残っているのは、自分のものではないはずの古びた日記。そこには、顔の思い出せない妹の言葉が残されていた。
長い階段の先にあるのは、塔の頂上に築かれた街「ジェンガ」。この街では、やってきた人々が自分の名前や過去を忘れ、それまで大切にしていた荷物を差し出し、その品々を材料に新しい街を作り続けている。住人は皆「ジェンガ」という同じ名前を与えられ、街を拡張するために働いている。
鞄、家具、写真、玩具、鉄骨、日用品。誰かの記憶を宿したものが積み重なり、街そのものになっていく中で、青年はひとつの紙切れだけを手元に残していた。
忘れることと、積み上げること。手放すことと、自分が誰だったのかを思い出すこと。
街を作り続ける人々の中で、一人の青年が自分の過去と向き合っていく物語。

