壁塗り
作・中野浩作
作品紹介
町の果てにそびえる、どこまでも続く真っ白な壁。その壁を毎日、白いペンキで塗り続けている一人の男がいる。
かつて男は、貧しく無名な絵描きだった。恋人をモデルに、自分の好きな色を使い、自分の好きな絵を描く。それだけで男は満足していた。
ところがある日、町の有力者が彼の絵を「素晴らしい」と評したことをきっかけに、その評価は噂となって街中へ広がっていく。誰にも理解されなかった絵描きは、いつしか「才能ある芸術家」として扱われるようになる。
他人から与えられた評価は、いつから自分自身になるのか。才能とは誰が決めるものなのか。
色を描いていた一人の男が、白い壁を塗るようになるまでを描く物語。
舞台・世界観
舞台となるのは、果てを持つひとつの町。
町の端には、上にも横にも終わりの見えない巨大な壁がそびえている。材質や形は定められておらず、ただ「世界の果ての壁」として存在している。
その壁の傍らで、一人の男が毎日、白い壁の上へ白いペンキを塗り続けている。壁の向こうではなく、彼の背後に町があり、人々の生活や無数の色が広がっている。
物語は語り手によって進められ、絵描きの過去と現在、町の人々や有力者たちの言葉が、語りと場面の往復によって立ち上がっていく。
この世界では、色、絵、噂、才能、そして白い壁が、男自身の変化と結びついている。

