きらさく(きらめく花の咲く話)
作・中野浩作
作品紹介
いくつもの街を渡り歩き、人々に「あなたの幸せは何だい?」と問いかける旅人。
その胸元には、いつも一輪の美しい花が咲いている。
けれど昔、彼女は旅人ではなく、腕利きの泥棒――アイリスだった。
ある日アイリスが訪れたのは、誰もが幸せに暮らしているという「シアワセの花の街」。
そこで彼女は、街の幸福を支える聖女・マリーと出会う。
マリーは、自らの命を街の花へと注ぎ、やがて一輪の花となることを「自分の幸せ」だと語る。
しかしアイリスは、その言葉の奥にある迷いを見逃さない。
「それは聖女としての役目の話だろ?」
「じゃあ、あんた自身の幸せは何なんだい?」
自由に生きてきた泥棒と、自分の役割のために生きてきた聖女。
二人が街の外へ踏み出したとき、それまで誰かに決められていた「幸せ」の形が、少しずつ変わり始める。
これは、誰かから与えられる幸せではなく、自分自身で幸せを選ぶことについての物語。
舞台・世界観
舞台となるのは、街中に花が咲き、人々が皆「幸せ」に暮らしているというシアワセの花の街。
この街の花は、ただの植物ではない。
街によって選ばれた「聖女」が自らの命を花へと注ぎ続けることで咲いている。
聖女は命が尽きると一輪の花へ姿を変え、街に残る。
そして新たな聖女が選ばれ、再びその命を街の幸福のために捧げる。
それは代々繰り返されてきた、この街の仕組みであり、聖女に与えられた使命でもある。
街の人々にとって、花は「幸せ」の象徴であり、聖女の存在によって自分たちの幸福は守られていると信じられている。
一方、街の外には無数の土地があり、豊かな街、貧しい街、平和な街、争いの絶えない街など、それぞれに異なる暮らしと異なる「幸せの形」が存在する。
物語は、この閉じた「幸せの花の街」と、その外側に広がる世界を往来しながら、
誰かに与えられた幸せと、自分で選び取る幸せを対比していく。

