コトホギ

作・中野浩作

初演:2026.07.10掲載戯曲:35ページ

作品紹介

仕事帰り、カサバリが乗り込んだのは、始発も終点もない環状鉄道「コトホギ」。
降りるためには、自分の抱えてきた「荷物」を花びらに変えて葬る――「花葬」をしなければならない。
案内係のウチステとともに鞄の中身をひとつずつ辿るうち、そこに詰まっていたのは物だけではなく、手放せなかった過去や、いつの間にか自分を縛っていた言葉だった。

持っていくものと、置いていくもの。
誰かに決められた自分と、自分で選ぶこれから。
二人の女が、ぐるぐる回る列車の中で、それぞれの「行き先」を探す物語。

舞台・世界観

舞台は、始発も終点も存在しない環状鉄道「コトホギ88系」の車内である。

どこか現実の都市鉄道に似ていながら、通常の時間や場所の感覚からは切り離された空間である。列車は走り続け、ときおり駅に停車するが、乗客は自分の抱える「荷物」を花葬しなければ降りることができない。

コトホギの中では、現在だけでなく、過去の記憶や失われた物、かつての自分までが「荷物」として現れる。鞄の中には、今そこにあるはずのないチケットや手紙、退職願などが収められ、時間や場所の区別を越えて、その人が手放せずにいるものが形を持って現れる。

そこで行われる「花葬」は、単に物を捨てる行為ではない。大切だったもの、意味を持っていたもの、過去の自分を否定せずに見送り、花びらへと変えて送り出すための行為である。

現実と記憶、日常と寓話の境界が曖昧に溶け合う列車の中で、登場人物たちは「何を手放し、何を持っていくのか」を選ぶことになる。

コトホギ 戯曲1ページ目

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