さくはなし

作・中野浩作

初演:2014.03.14掲載戯曲:40ページ

作品紹介

大きなお屋敷で、帰ってこない父を待ち続ける「お嬢様」。

彼女のそばには、執事のトマ、メイドのツジ、女中のおせん、番犬のBC。

使用人たちはそれぞれの「習慣」に従いながら、お嬢様を守り、世話をし、決して屋敷の外へ出さない。

お嬢様が欲しがるのは、一輪の花。
けれど彼女は、花がどんな形をしているのか知らない。

そんな屋敷に、ときおり「虫けら」たちが入り込んでくる。

蝶のように、虫のように、どこか捉えどころのない彼らは、閉じられた屋敷の外側に別の世界があることを、お嬢様に少しずつ知らせていく。

「可愛い」と「愛らしい」。
「人形」と「人間」。
「習慣」と「自由」。
「花」と「虫けら」。

同じ朝、同じ会話、同じ決まり事を繰り返す屋敷の中で、少しずつ何かがずれていく。

これは、誰かに守られることと、誰かに形を決められることの境界をめぐる物語。
そして、自分の花を咲かせるために、「習慣」を断ち切ろうとする話。

舞台・世界観

舞台の中心となるのは、お嬢様と使用人たちが暮らす一つの屋敷。

屋敷では、毎日ほとんど同じ朝が繰り返される。

お嬢様は、どこかへ出かけた父を見送り、帰りを待つ。

使用人たちは、お嬢様に水を与える、絵を描く、身の回りを整える、虫けらを追い払う――それぞれに決められた「習慣」を持っている。

その習慣は仕事であると同時に、この屋敷そのものを維持するルールにもなっている。

屋敷の外には柵があり、その向こうは暗闇として語られる。

使用人たちは外を危険な場所として扱い、お嬢様が出ていくことを禁じている。一方、柵の向こうには「虫けらたちの町」が存在し、屋敷とは異なる価値観や生き方を持つ者たちが暮らしている。

この世界では、人形、花、虫けら、習慣といった言葉が、単なる物や生き物以上の意味を持つ。

人は同じ行動を繰り返すうちに「人形」のようになり、
屋敷の外から来る者は「虫けら」と呼ばれ、
自分自身の何かを獲得した者のもとには「花」が現れる。

そして、その人形を縛っている「習慣」は、舞台上ではまるで糸のようなものとして扱われ、鋏によって「切る」ことができる。

現実の屋敷でありながら、童話や人形劇のようでもある。

日常的な会話と不条理な言葉遊びが反復される中で、屋敷のルールそのものが次第に揺らいでいく――そんな閉じた世界を舞台にした作品。

さくはなし 戯曲1ページ目

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